建設業労災保険の補償内容
労働基準法には、使用者に「災害補償」の義務を課し,業務災害被害を受けた労働者保護について言及しています。一般的には、すべての労働者を平等に保護するために「労災保険」という制度が、設置されています。この「労災保険」は、万一緊急事態が起こった時に対応する労働者を保護する補償制度として設定されてきました。労働者であれば、雇用形態は関係なく業務災害が生じ瞬間から労災保険給付の受給権が生じ、たとえ、1日だけの契約で雇用されたとしても、給付は受けられるという労働者保護の制度です。
このように、通常、労働者は所属する会社の労災保険で保護されますが、建設業の場合は少し特殊ケースになっています。「建設業労災保険」は、請負金額を基にして算定されるため、元請のみが支払うというシステムになっています。というのも、建設業に関しては、請負会社が下請け、孫受けという仕組みの請負関係で成立している特殊な業務形態事情が、その背景にあるからなのでしょう。
例えばトンネル工事とかビル建設とかの事業では、ある一定期間を限度に終了するという性格を持っている言わば、永続性をもたず有限的なものであるため、どうしても通常の雇用形態の中に収まりきれません。いわば、一種のプロジェクト的ニュアンスを持った事業といっていいでしょう。
こうした建設業界の特殊な事業形態やそれなりの経緯事情も絡んでいるからなのでしょう。
こうした事情から、建設業における建設労働災害保険については、下請の会社に雇用されている労働者は、当該会社の労災保険で保護されるのではなく、元請の労災保険で保護されるという形態になっているのです。建設業では、災害補償責任は、元請の使用者が負うことになっています。
建設業は労災保険が、強制適用であって、たとえ下請の労働者であっても、アルバイトですら、労災保険に加入しなければならないことになっています。
<補償内容について>
・治療費と入院費 治るまで全額無料で支給される。
・仕事を休んだとき 休業4日目から、1日につき平均賃金の80%が支給される。
・障害が残ったとき 障害補償年金や障害補償一時金が支給される。
・死亡事故のとき 遺族補償年金、障害補償一時金が支給される。
ちなみに、雇用保険については、建設業の従業員は、雇用されている事業所と締結しています。
したがって、雇用保険は通常通り、けれど建設労災保険に関しては、元請け会社と締結するという特殊な形態となっていて、普通の会社が1回の手続きで済むところを、建設業の事業主は、労災保険と雇用保険の手続きを、二回に分けて行わなければならないという複雑な手続きを未だに取っているのが現状です。これが、日本特有の実態なのか、世界全体の実態なのかは定かではありません。
しかし、元請けとか、下請け、孫受けとかいうこうした上位下達式の事業形態は、官僚システムにも似て、やはり、この辺をもう少し整理することが先決のようにも思えます。